Systems Thining [システム・シンキング]

システム・シンキングとは何か

 

システム・シンキング(Systems Thinking)とは、対象を複数の要素から成るシステムとして捉え、要素間の繋がりを可視化しながら考える思考技法です。ここでシステム(System)とは、複数の要素が相互作用しながら機能を果たすものと定義されます。

 

例えば、箸は2本の棒が相互作用しながら食べ物を掴むという機能を果たすのでシステムと考えることができます。しかし、たまたま2本の棒が転がっていたとしても、それだけでシステムとは呼べません。要素と要素との相互作用、そして、全体として生み出される機能が重要なのです。

 

このように、物事を複数の要素に分け、要素同士がどのように影響を与え合い、最終的にどのような機能を生み出すのかを明らかにするのがシステム・シンキングです。

 

 

構造から変えていく思考アプローチ

 

なぜ、今システム・シンキングが注目されているのでしょうか。それは、複雑化する現代社会において、システム思考が効果的に望ましい結果を生み出すために有効だからです。

 

我々が現実世界で期待するのは意図した結果です。システム・シンキングでは、結果はシステムの振る舞いによって生み出されると考えます。さらに、システムの振る舞いはシステムの構造によって生み出されると考えます。逆に言えば、システムの構造を変えなければシステムの振る舞いは変わらず、システムの振る舞いを変えなければシステムの結果を変えることはできません。

 

狭い家の中の同じ場所で住人同士がいつも衝突するのは、家の構造が人の動きという振る舞いを規定しているからに他なりません。間取りを変えない限り住人は同じような動きを繰り返し、結果として同じ場所でいつも衝突するという現象が起こるのです。

 

これは、ビジネスや社会の問題でも全く同じことが言えます。構造から変えてしまわない限り、結果はいつまでも変わらないのです。そして、この構造を視覚的に分析し、効果的に変えていくテクニックこそがシステム・シンキングなのです。

たった2つのテクニック

 

システム・シンキングで用いるテクニックは2種類だけです。一つは因果関係を表現するリンク、もう一つはフィードバックを表すループです。AからBへの矢印で描かれた左の図がリンクであり、AからBへのリンクとBからAへのリンクから成る右の図がループです。2種類のルールを覚えるだけで、世の中のあらゆる対象をシステムとして視覚的に記述できます。

 

企業や市場、都市や国家、環境や自然に至るまで、世の中のあらゆる対象を構成要素に分解し、要素と要素との繋がりを可視的に分析しながら、問題が生み出される根本原因、効果的な対応策とその結果、さらには、望まない副作用までも事前に予想することが可能になるのです。

 

さらに、システム・シンキングをグループで共有することで、当事者間の問題に対する捉え方の相違を明らかにし、迅速かつ効率的な問題解決に貢献してくれます。

ロジカル・シンキングの弊害

 

具体的な例を挙げましょう。ある事業で利益が下がっており、その原因を究明し、対策を検討するという状況を考えます。このような場合、従来多用されてきたのがロジカルシンキングです。

 

ロジカルシンキングでは、対象を複数の要素に分解して考えます。つまり、利益を売上と費用に分解し、さらに売上は販売単価と販売量の積に分解し、費用は変動費と固定費の和に分解することで、どの要素の変化が利益を押し下げている主要因なのかを究明します。

 

ここで、販売量の減少が判明したので、広告を出して改善することを考えたとします。販売単価は一定とすると、広告により販売量が増加して売上が上がり、利益も上がると考えられます。しかし、広告を出したことによって費用が増加することも同時に考慮しなければなりません。

 

ロジカルシンキングによる分解では、このような要素間の繋がりが生み出す副次的影響を的確に捉えることが難しいのです。有効と信じて実施した対策が予想した結果を生み出さない原因は、まさにこの要素間の繋がりを無視することにより発生します。

要素間の繋がりを可視化する

 

この問題は、要素間の繋がりを可視化しながら考えるシステム・シンキングを身に付けることで解決できます。

 

システム・シンキングを用いれば広告量を増やすことで広告費が上がり、変動費が上昇して費用が増え、利益を押し下げるというバランス型ループの存在を可視的に認識できます。また、販売量が増加することで変動費も増え、利益を押し下げるバランス型ループが存在することも分かります。

 

対策の意図としては、広告により販売量を増やし、売上を増やすことで利益を改善するという自己強化型ループに着目したわけですが、このシステム内には複数のフィードバックが存在し、意図とは異なる副作用を生み出すループも含むことさえ認識していれば、より適切な判断が可能になるのです。

 

システム・シンキングは、対象を要素に分解するのみならず、それらを統合し、さらには俯瞰して考えることに長けた思考技法であると言えます。

Systems Innovation Laboratory

Graduate School of Technology Management

Ritsumeikan University

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